抗毒素製剤の高品質化、及び抗毒素製剤を用いた治療体制に資する研究 [AMED阿戸班]

ガス壊疽

gas

近年、Clostridium 属による四肢にガスを伴った筋肉の壊死を伴う古典的ないわゆるガス壊疽の頻度は低下しました。その一方で、非 Clostridium 属によるガス壊疽の頻度は、高齢化や糖尿病などの併存症との関連で増加しています。そのため、主に Clostridiumperfringens(C. perfringens Type A, C. septicum,C. oedematiens)に対して製造された外傷性創傷感染症のガス壊疽治療に対する使用の頻度は低下しています。

Clostridum perfringens敗血症:発熱。血圧低下。肝臓に膿の塊(肝膿瘍)。血尿。

古典的ガス壊疽とは異なり、内因性のC. perfringensによる肝膿瘍などの敗血症が増加しています。これは、C. perfringensによるα毒素によって血管内溶血と重症貧血、DIC、多臓器障害を急激に呈して死に至ります。van Bunderenらは、このC. perfringens敗血症による血管内溶血を来して数時間で死に至る症例を集積して報告し、その死亡率は80%を超えると報告しています。抗菌薬投与と感染巣のドレナージは治療の大原則ではありますが、それに加えてC. perfringensに対するガス壊疽抗毒素の投与がその病態から検討され始めています。現在のところ、確立されたエビデンスはありません。

ガス壊疽について

 クロストリジウム属菌は、グラム陽性の胞子形成性の嫌気性桿菌であり、通常土壌や、ヒト及び動物の消化管に見られる。ウェルシュ菌による内因性の敗血症は、外傷によって引き起こされるものではく、外傷に伴う典型的なガス壊疽とは異なる。
 内因性のウェルシュ菌敗血症は、急速に進行する血管内溶血および代謝性アシドーシスとして発症することが多く、標準的な集中治療で70%を超える高い死亡率を示す。このような場合、ウェルシュ菌によって分泌されるアルファ毒素は、血管内溶血、播種性血管内凝固症候群、および多臓器不全の原因となる主な毒素と見なされる。シータ毒素はサイトカインカスケードを引き起こし、敗血症性ショックで見られるのと同様の末梢血管拡張を引き起こす。
 ウェルシュ菌感染症の場合、高用量ペニシリンなどの抗生物質、および可能な限り早期の外科的ドレナージが主な治療法である。ただし、敗血症の現在の死亡率を考慮すると、ウェルシュ菌感染症の現在の標準治療では転帰は改善されない。ガス壊疽抗毒素と組み合わせたシータ毒素に対するモノクローナル抗体は、有望な治療選択肢となる。